リスクの考え方について

東京海上日動火災保険が企業向けに、地震発生時に安全確保にかかった実費を補償する保険を販売すると発表した。商業施設や工場内の地震計が検知した震度が事前に決めた震度に達すると、物的損害がなくても保険金を支払うのが特徴だ。

地震による物的損害なしで、被害軽減にかかった費用を補償する保険は珍しいと思う。

契約者が商業施設内のエレベーターを緊急停止するなどの安全確保策を採りやすくしたり、エレベーターに閉じ込められた人の開放にかかる費用や正常稼働に向けた点検費用をまかなえるようになる。

ただし、物的損害のないこれらの費用は企業にとってそれほど大きな金額にはならないだろう。そのためそのようなリスクを保険で備えなければいけないかどうかには疑問を感じる。

一般的にリスク管理は、「リスク回避」「リスク軽減」「リスク移転」「リスク保有」の4つに分類される。

 

  1. 「リスク回避」
    リスクを生じさせる要因そのものを取り除く。例えば新規事業の検討について事業そのもを諦めるなどを指す。
  2. 「リスク軽減」                             リスクの発生可能性を下げる、もしくはリスクが顕在した際の影響の大きさを小さくすること。たとえば、建物に耐震補強などをすることなどが当てはまる。
  3. 「リスク移転」                              文字通り、リスクを自組織外へ「移転」する行為だ。これがまさに「保険」である。
  4. 「リスク保有」                             特に対策をとらず、その状態を受け入れることを指す。リスクが受け入れ可能な大きさであると判断された場合にはこれもきちんとした対策だ。

地震被害にかかる費用軽減は、物的損害を伴わなければそれほど大きなリスクではないと考えられるためリスク保有しても問題ないとも思う。

まぁ保険会社からすればリスクは保険で「移転」してもらわなければ商売にならないし、その上で「軽減」措置を取ってもらって事故を防いでもらい保険金支払いを減らすのが一番ありがたいだろう。

 

人生にはさまざまなリスクがあるが「移転」は最もお金のかかる対策だと思う。

老後の資金や医療費、死亡時の費用などに備える保険商品は無数にあり、テレビCMでも頻繁に目にする。

でも本当に「移転」しなければならないのか、「保有」することはできないのかも考えてみよう。

そんなことを考えさせられたニュースだった。